コロナウイルス新規感染者数の減少に伴い、米国では2月から徐々にマスク着用義務が各州や地域で緩和されました。私が住む地域では、昨年12月下旬から始まった室内でのマスク着用義務が医療機関など一部を除き2月末で撤廃されました。実際、3月に入りマスクを着用する人は激減しました。マスク着用率は地域によって異なると思いますが、私の周りでは引き続きマスクを着用する人は2~3割程度になったように思います。
マスク義務の撤廃に伴い、米コメディバラエティ番組でマスク着用を取り上げたコントが放送されました。マスク着用やワクチン接種に関しての話がなんだか気まずい今日この頃を面白おかしく表現していました。今回はそのコントの内容を紹介しながら、実際にアメリカ生活で感じる「気まずさ」を紹介します。
米コメディバラエティー番組『Saturday Night Live』、通称SNLとは?
『Saturday Night Live』、通称SNLはNBCで毎週土曜日夜に生放送されているコメディ番組です。毎回ゲストがその回のホストとなり、ゲストのオープニングモノローグ、レギュラー出演者とゲストのコント、時事ネタのパロディや音楽ゲストの演奏で構成された90分の番組です。
Wikipediaに「番組の一番の見せ場は『アメリカ合衆国大統領や政治家のパロディや揶揄・政治風刺』である」とありますが、大統領選のディベートのパロディは私が覚えている限り毎回やっていて、トランプ氏VSバイデン氏のディベートを誇張したパロディでは「アメリカに住んでいなければ面白いディベートだった」という言及から始まり、再現度が高くて記憶に残る面白さでした。
以前のアメリカ生活を再開して感じたアメリカの変化についての投稿でも書きましたが、昨年Netflixの韓国ドラマ『イカゲーム』が人気を博した際にSNLで『イカゲーム』のパロディミュージックビデオが放送されました。ミュージックビデオでは、イカゲーム参加の理由などがアメリカ風にアレンジされていて面白かったです。
参考:
・YouTube動画:SNLトランプ氏VSバイデン氏のディベートパロディ
・YouTube動画:SNL『イカゲーム』のパロディ
マスク着用についてのコント「COVID Dinner Discussion」
現在放送中のSNLシーズン47 13話、2月26日放送のジョン・ムラニー氏がホストの回でマスク着用やワクチン接種について議論するコントが放送されました。このコントは、近年のマスク着用やワクチン接種の有無に関する気まずさを表現していて、共感する人が多かったのではないでしょうか。
*下記コントの内容に触れるので、ネタバレなしでコントを見たい方はご注意を。
マスク着用やワクチン接種の話題は気まずい…“Emotional Topic”
コント内容:
コントはCDC(アメリカ疾病予防管理センター)がマスク着用義務を全米で撤廃するという話から始まり、ウイルスがまだ存在するにもかかわらず義務がなくなるため、「マスク着用は本当に必要だったのか?」という話に。「マスクは効果がなかったという記事を読んだ」と1人が発言すると、この世の終わりのような気まずい雰囲気に。この議題について“Emotional Topic”(感情的なトピック)と表現しています。“Emotional”は「感情的」という意味ではありますが、ここでは「ストレスを感じる」「怒りを伴う」という意味が強いと思います。
実際:
実際、アメリカではマスク着用の効果に懐疑的な人やマスク着用を嫌う人は多いように思います。嫌う理由はやはりマスク着用が選択制ではなく義務化されたことだと思います。ワクチン接種もそうですが、本人の意思での着用や接種を許さず、強制(接種しないと解雇など)されるのがアメリカに住む人にとっては自由が奪われているという感覚のようです。
極端な例ですが、3月2日にフロリダ州知事が記者会見でその場にいた高校生にマスク着用は馬鹿げているから着用を辞めるよう話しかけ、最後には”We’ve gotta stop with this Covid theater.”(コロナ劇場を終わらせなくてはならない)と発言しました。記者会見のカメラが沢山ある中で、プレッシャーを感じてマスクを外す高校生もいました。
・CNN 米フロリダ州知事、マスク着用の高校生に外すよう諭す「馬鹿げている」
問題はワクチン接種の有無は外見からでは分からないから?
*コントに戻ります
コント内容:
現状について自分の考えを話し始めた女性が、「ワクチン接種をしない人は正当な理由があるのか…」と言いかけて、周りの人は物議を醸しそうな発言にヒヤヒヤ。「発言に気を付けて…」と視線を送ります。
実際:
実際のところワクチン接種の有無は外見からでは分からず、ワクチン接種をしなくてもマスクを着用しない人もいるので、他人を信用できない…という話をよく聞きます。また、マスクやワクチンの効果を信用する人は民主党支持者、信用しない人は共和党支持者と自分の政治感覚を決めつけられてしまうのをためらう人もいます。
コントで「マスクは効果がなかったという記事を読んだ」と発言した女性が右側に座り、赤い(共和党イメージカラー)服を着ていて、左側に座って最初からマスクをしていた男性が青色(民主党イメージカラー)の服を着ているのも意図的かもしれません。
コント内容:
ワクチン接種の有無で仕事を失ったり、友達を無くすことへの不満が爆発。
実際:
コロナウイルス感染への恐怖は人それぞれで、私の周りでは「もうコロナにかかることは気にしないから日常生活に戻る」人もいれば、「まだ安心できないからマスクを着用して外出を控える」と両方の意見を聞きます。最近はコロナを気にしない人のほうが多いので、まだ警戒している人はコロナを理由に外出の誘いを断ることが億劫でコロナの話題を避けて別の理由で断るケースが多いようです。
その他の不満も爆発
コント内容:
コントでは更にコロナ検査キット配布やCDCへの不満が爆発してそれぞれが思いを吐露。スッキリしたところでみんなで乗り切ろうとまとめて終わります。
実際:
マスク着用、ワクチン接種、外出についての考えは人それぞれでマスク着用義務が緩和された今でも相手がどの程度の行動範囲なら許容できるかを探りながら誘わなければなりません。この話題に関しては、しばらく気まずい空気が続きそうです。
まとめ
今回は、米コメディ番組SNLのマスク着用に関するコントを紹介しながら、実際に私が感じるアメリカ生活の中でのマスク着用やワクチン接種に関する話題の気まずさを書いてみました。みんなが感じている気まずさを代弁して笑いに変えたコントだと思いました。
マスク着用に関しては日本ではあまり問題にならないかと思いますが、やはりアメリカに住む人はマスクを好まない傾向にあると思います。また、ワクチン接種の有無や行動の許容範囲は人によって違い、政治的な質問だと捉える人もいるので聞く際は注意が必要かもしれません。
マスク着用・ワクチン接種の有無は自分で判断して決めるのがアメリカでの自由であり、すべては個人にゆだねられているように思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!